冬の船 7






道玄坂の途中で

「久しぶりです」

台風が近づいてくるこの夕暮れを僕は平凡に帰宅を急いでいたから

聞こえないふりをして急ぎ足で坂を上った

すると

バサリと
何か大きなカバーのような
建築現場の大きなブルーシートのような覆いが僕に被せられようとしていた

もっとも、その大きな覆いはブルーではなかった

夜空であった

その「久しぶりです」と声をかけてきた妙に大きな女は
僕に夜空を被せたのだ

それも
渋谷の夜空ではなく

どこかしら田舎町の歩道橋の上の夜空を被せたのだ

気がつくと
星々瞬く田舎町の歩道橋に僕と大きな女は立っていた

大きな女は僕に
八朔をくれた