冬の船 7






道玄坂の途中で

「久しぶりです」

台風が近づいてくるこの夕暮れを僕は平凡に帰宅を急いでいたから

聞こえないふりをして急ぎ足で坂を上った

すると

バサリと
何か大きなカバーのような
建築現場の大きなブルーシートのような覆いが僕に被せられようとしていた

もっとも、その大きな覆いはブルーではなかった

夜空であった

その「久しぶりです」と声をかけてきた妙に大きな女は
僕に夜空を被せたのだ

それも
渋谷の夜空ではなく

どこかしら田舎町の歩道橋の上の夜空を被せたのだ

気がつくと
星々瞬く田舎町の歩道橋に僕と大きな女は立っていた

大きな女は僕に
八朔をくれた



冬の船 6






港に行って思い出す
出航した船を思い出す

僕は船に乗った
それを思い出す

銀河を宿した馬を
思い出す

少女の
かわいいおへそを
思い出す

冬の船は
出航して
永遠航路をゆく

だから
何度だって出航する

僕は出航する

冬の船で